Academic Stage Ⅱ 10日(木) 12:45-13:15
静岡大学

平川 和貴

大学院総合科学技術研究科工学専攻 ・教授

がん選択的光線治療薬の開発

超高齢社会の現在、手術で完治が見込まれるがんでも、止血困難なために手術できない患者が急増している。また、手術で完治しても重い障害が残るリスクがある。一方、放射線治療等、従来の低侵襲ながん治療は、大掛かりな設備が必要な上、高額である。そこで、比較的簡便な医療機器で安価に治療できる光線力学的療法に着目した。光線力学的療法は、暗所では人体無害な薬の投与と内視鏡による可視光照射で行われる。従来法では、酸素を必要とするため、低酸素ながんには効果が限定されると考えられてきた。我々は、活性酸素に依存しない電子移動機構を利用できるポルフィリンを研究し、分子レベルの実験でその開発に成功した。開発したリンポルフィリン誘導体は、培養細胞レベルで、がん細胞選択的に光毒性を示した。また、マウスの腫瘍に選択的に取りこまれ、1週間程度で排出されることを確認し、さらに、従来薬以上の抗腫瘍作用を示すことを明らかにした。

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